結論:段階ごとに使える制度が違う
実家じまいは、片付け → 家の行き先(売る・解体する)→ お墓・仏壇、と段階を踏んで進みます。補助や優遇もこの段階ごとに分かれています。
| 段階 | 使える制度 | 実施するところ | 目安 |
|---|---|---|---|
| 家財の片付け | 空き家の家財処分補助 | 一部の市町村・東京都 | 費用の1/2〜全額、上限5万〜30万円 |
| 建物の解体 | 空き家の解体補助金 | 市区町村 | 上限の中央値50万円(1,164市区町村) |
| お墓の返還 | 撤去費の助成・使用料の還付 | 公営墓地のある一部の市町村 | 撤去費の助成は上限15万〜44万円 |
| 売却 | 空き家の3,000万円特別控除 | 国(税制) | 譲渡所得から最大3,000万円 |
| 名義の変更 | 100万円以下の土地の登録免許税の免税 | 国(税制) | 2027年3月31日までの申請 |
どれも「申し込めば必ずもらえる」ものではなく、条件と受付期間があります。以下、段階ごとに説明します。
1. 片付け(家財処分)の補助
家財の片付けや遺品整理を補助する国の制度はありません。一部の市町村が、空き家を売る・貸す前提で、家財処分の費用を補助しています。当サイトで公式ページを確認できたのは次の12自治体です(2026年10月6日確認)。
| 自治体 | 制度名 | 補助の額 | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| 東京都 | 東京都空き家家財整理・解体促進事業 | 経費(税抜)の1/2、上限5万円(解体は上限10万円) | 都の空き家ワンストップ相談窓口に相談し、紹介された協力事業者と契約。交付決定の後に実施 |
| 富山県氷見市 | 氷見市空き家片付け支援補助金 | 費用の1/2以内、上限30万円 | 事業者に頼んで片付けとクリーニングをし、空き家情報バンク等に3年間登録 |
| 新潟県小千谷市 | 家財道具等処分支援事業補助金 | 1/2以内、上限20万円 | 空き家情報バンクに2年以上登録することが確実な人。着手前に申請 |
| 神奈川県相模原市 | 空き家家財処分等補助金交付事業 | 経費が5万円を超える場合に1/2、上限20万円 | 津久井・相模湖・藤野地区の空き家。事前申請、市の許可業者に依頼、「里まっち」に登録 |
| 鳥取県鳥取市 | 鳥取市空家等除却事業(残置物処分費) | 1/2、上限20万円 | 危険な空家を解体する同じ契約での残置物処分に限る。先着15件 |
| 富山県高岡市 | 高岡市空き家おかたづけ支援事業 | 1/2、上限10万円 | 事業者に頼み、その後に空き家・空き地情報バンクに登録。事前申請 |
| 福島県郡山市 | 空家バンク活用支援事業費補助金 | 1/2、上限10万円(相続手続は上限5万円) | 空家バンクの加盟事業者に依頼。事前申請。令和8年度の申請は11月30日まで |
| 岩手県岩泉町 | 住まいるづくり事業補助金(空き家片付け等) | 10/10(全額)、上限10万円 | 空き家・空き地バンクに登録。町内事業者に依頼。交付決定前の着手は対象外 |
| 大分県中津市 | 空き家バンク登録推進補助金(家財処分) | 全額、上限10万円 | 空き家バンクに登録(予定を含む)。市内に事務所がある業者。着手前に申請 |
| 佐賀県伊万里市 | 空き家家財処分費等補助金 | 1/2、上限10万円 | 空き家情報バンクに登録予定の所有者・相続人など。処分の前に申請相談 |
| 三重県伊賀市 | 伊賀市空き家家財等処分事業補助金 | 業者委託は1/2、上限10万円(バンク公開以外は5万円) | バンク公開・宅建業者との媒介契約・解体予定のいずれか。市内の許可業者 |
| 鹿児島県いちき串木野市 | 空き家利用促進補助金(家財撤去) | 2/3、上限10万円(仏壇等を撤去する場合は15万円) | 空き家バンクに登録した空き家。登録日の前後6か月に市内事業者へ依頼 |
市町村の制度には、ほぼ共通して次の条件があります。
- 空き家バンクへの登録(売る・貸すことが前提。解体だけでは使えないことが多い)
- 事前申請(片付けを始めてからでは対象外)
- 市内・町内の業者に頼むこと
- 予算に達したら終了
受付期間がページに書かれていない制度も多く、年度の途中で予算に達して締め切られることがあります。使えそうな制度があったら、片付けを始める前に担当課へ電話で確認してください。
上の12自治体のほかにも、空き家の解体補助金を調べる途中で、家財処分の補助を設けている市町村を80か所以上(上の表の一部を含む)見つけています。一覧は空き家の片付け(家財処分)に使える補助金にまとめています。業者の選び方は実家の片付け業者の選び方にまとめています。
2. 解体の補助
建物を解体するときは、市区町村の空き家の解体補助金が中心です。当サイトで公式ページを確認した1,164市区町村のデータでは、上限額の中央値は50万円でした。
| 上限額 | 市区町村数 |
|---|---|
| 30万円以下 | 320 |
| 40万〜50万円 | 496 |
| 60万円 | 62 |
| 80万円 | 84 |
| 100万円以上 | 202 |
多くの市区町村で、次の条件があります。
- 市の現地判定で「老朽化して危険」とされた空き家であること
- 交付決定の前に契約・着工しないこと
- 市内や県内の業者に頼むこと
- 税金の滞納がないこと
補助率・上限額・受付状況は市区町村ごとに違います。→ 空き家の解体補助金 一覧(市区町村別)
3. 墓じまい・仏壇の補助
墓じまいの費用を補助する国の制度はなく、寺院墓地や民営霊園のお墓に使える補助金も当サイトの調査では見つかっていません。市町村が管理する公営墓地を返すときに限って、墓石の撤去費の助成(群馬県太田市・千葉県浦安市・千葉県市川市)や、使用料の一部の還付がある自治体があります。→ 墓じまいの補助金(公営墓地の返還で使える制度の一覧)
仏壇だけを処分する費用の補助は、上の表のいちき串木野市のように、空き家の家財処分補助の中で仏壇の撤去を対象にしている例があります。処分の方法は仏壇を処分する方法を参照してください。
4. 売るときの税金の優遇
補助金ではありませんが、金額がいちばん大きくなりやすいのが空き家の3,000万円特別控除です。亡くなった親がひとりで住んでいた家を相続して売り、利益が出た場合、条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円(相続人が3人以上なら1人2,000万円)を差し引けます。2027年12月31日までの売却が対象です。
主な条件は、1981年5月31日以前に建てられた家であること、相続から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であることなどです。→ 空き家特例の要件とチェックシート
5. 名義を変えるときの優遇
実家じまいの前提になる相続登記では、評価額(持分があれば評価額×持分)が100万円以下の土地は、2027年3月31日までの申請なら登録免許税がかかりません。登録免許税の額は計算ツールで確認できます。
補助金の申請者は所有者や相続人に限られることが多いので、名義が亡くなった親のままなら、先に相続登記を済ませておくと手続きが進めやすくなります(→相続登記の義務化)。
補助金はどの順番で申請する?
業者と契約する前に、実家のある市区町村の制度を調べて事前申請し、交付決定を受けてから片付け・解体をします。
- 実家のある市区町村の制度を調べる:解体・家財処分・空き家バンクの担当課に電話するのが早い
- 名義を確認する:申請できるのは所有者・相続人。共有なら全員の同意が必要なことが多い
- 事前申請・交付決定を待つ:業者との契約や着手はその後
- 片付け・解体を行う:市内業者・許可業者など、指定の条件を守る
- 実績報告をして補助金を受け取る:領収書・工事前後の写真が必要なことが多い
お金がなくて実家じまいが進まないときは?
古家付きのまま売る、空き家バンクに登録する、相続放棄、相続土地国庫帰属制度の4つを比べます。補助金があっても、費用の一部しか出ないのが普通です。
| 方法 | 内容 | 詳しく |
|---|---|---|
| 古家付きのまま売る | 解体費をかけずに、建物付きで売る・買取業者に売る | 実家が売れないときの対処法・実家の買取 |
| 空き家バンクに登録する | 家財処分の補助の条件になっていることが多い | 実家のある市町村の窓口 |
| 相続放棄 | 実家を含めて一切の財産を相続しない。原則3か月以内 | 相続放棄 |
| 相続土地国庫帰属制度 | 相続した土地を国に引き取ってもらう。建物は解体が必要で、負担金は原則20万円 | 田舎の土地を手放す方法 |
よくある質問
実家じまいの補助金はありますか?
「実家じまい」そのものを対象にした国の補助金はありません。使えるのは、市区町村の空き家の解体補助金、空き家バンクと組み合わせた家財処分の補助、公営墓地を返すときの助成、相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除など、段階ごとの制度です。
実家の片付け(遺品整理)に補助金は出ますか?
国の制度はありません。一部の市町村に、空き家の家財処分費を補助する制度があります。多くは空き家バンクへの登録が条件で、上限は5万〜30万円ほどです。東京都は、都の相談窓口から紹介された事業者で家財整理をした場合に、費用の2分の1(上限5万円)を補助しています。
補助金は工事や片付けが終わってから申請できますか?
ほとんどの制度は、交付決定の前に契約・着手すると対象外です。業者に頼む前に、市区町村の窓口で申請の順番を確認してください。
親の名義のままの家でも補助を受けられますか?
申請できるのは所有者や相続人に限られることが多く、相続人全員の同意書を求める市区町村もあります。相続登記は2024年4月から義務になっているので、早めに名義を整理しておくと手続きが進めやすくなります。
あわせて読みたい
出典
- 東京都住宅政策本部「東京都空き家家財整理・解体促進事業」
- 小千谷市「家財道具等処分支援事業補助金」
- 氷見市「氷見市空き家片付け支援補助金」
- 高岡市「高岡市空き家おかたづけ支援事業」
- 相模原市「相模原市空き家家財処分等補助金交付事業」
- 郡山市「郡山市空家バンク活用支援事業費補助金」
- 岩泉町「岩泉町住まいるづくり事業補助金」
- 中津市「中津市空き家バンク登録推進補助金(家財処分)」
- 伊万里市「空き家家財処分費等補助金」
- 伊賀市「伊賀市空き家家財等処分事業補助金」
- いちき串木野市「空き家利用促進補助金」
- 鳥取市「鳥取市空家等除却事業」
- 国税庁 タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
- 法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」
2026年10月6日時点の情報です。制度は変わることがあるため、手続きの前に各窓口で確認してください。調べ方は調査方法にまとめています。