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売却・買取

田舎の土地を手放す方法|宅地・農地・山林ごとの処分方法と国庫帰属のデータ

更新日 2026年10月1日公的機関の資料をもとに作成

相続した田舎の土地は、地目(宅地・農地・山林など)によって、売れる相手も、必要な手続きも、国に引き取ってもらうときの費用も違います。まず全体像をつかみ、自分の土地に合う方法を探しましょう。

まず地目と「今の状態」を確認する

田舎の土地を手放す方法は、土地の種類(地目)でほぼ決まります。最初に次の2つを確認しましょう。

  • 登記簿の地目:法務局で取れる登記事項証明書や、固定資産税の納税通知書に書かれています
  • 今の状態(現況):登記は「畑」でも実際は木が茂って森林になっている、ということは田舎ではよくあります

国庫帰属制度の負担金や、森林の届出などは、登記の地目ではなく今の状態で判断されるものがあります。林野庁も、森林の届出について「登記上の地目によらず」森林の状態なら対象になる可能性が高いと案内しています。

建物(実家)が建っている土地の場合は、田舎の実家が売れない時の処分方法で、仲介・買取・解体などを詳しくまとめています。この記事では、主に建物のない土地を扱います。

地目ごとの比較表

地目 主な売り先・引き取り先 売るときに必要な許可・届出 国庫帰属の負担金 主な相談先
宅地 隣の人、一般の買い手、不動産会社 原則なし 20万円(市街化区域内などは面積で計算) 不動産会社、市区町村の空き家・空き地担当
農地(田・畑) 農業をする人 農地のまま:農業委員会の許可(農地法第3条)/転用して売る:都道府県知事等の許可(同第5条) 20万円(市街化区域・農用地区域などは面積で計算) 市町村の農業委員会
山林(森林) 隣の山林の所有者、林業の事業者など 売主の許可は不要。買主は90日以内に市町村へ届出 面積で計算(最低でも約21万円) 市町村・都道府県の林務担当
原野・雑種地など 隣の人、一般の買い手 原則なし(今の状態が森林なら届出の対象になりうる) 20万円 不動産会社、市区町村

地目ごとの詳しい手続きは、姉妹記事で扱っています。

国庫帰属制度の実績データ(法務省統計)

相続した土地を国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」は、2023年4月27日に始まりました。法務省は運用状況を公表しています。以下はすべて、法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(令和8年9月16日更新)の令和8年8月31日現在の速報値です。

申請・結果の総数

区分 件数 申請に対する割合(当サイト計算)
申請件数 5,997件 ―
帰属件数(国のものになった) 3,119件 約52.0%
却下件数 85件 約1.4%
不承認件数 100件 約1.7%
取下げ件数 1,139件 約19.0%

申請件数から帰属・却下・不承認・取下げを引くと1,554件になります。これは審査中などと考えられますが、法務省が「審査中」の件数として公表した数字ではありません。

法務省のページは最新の累計値に書き換えられる形式で、過去の時点ごとの数字(推移)は同じページに残っていません。この記事では最新の時点の数字のみを載せています。また、負担金の金額の分布(いくら納めた人が何件か)は公表されていません。

地目別の内訳

申請(地目別) 件数 割合 帰属(種目別) 件数 割合
田・畑 2,335件 約38.9% 農用地 989件 約31.7%
宅地 2,091件 約34.9% 宅地 1,164件 約37.3%
山林 902件 約15.0% 森林 203件 約6.5%
その他 669件 約11.2% その他 763件 約24.5%

※割合は当サイトが件数から計算したものです。

申請は「地目別」、帰属は「種目別」と、法務省の分け方が違います。たとえば登記が山林でも、帰属のときに「その他」に分類されることがありえるため、行どうしを割り算して「山林の承認率」とするのは正確ではありません。それでも、申請で多いのは田・畑、森林として帰属した件数は少ないという傾向は読み取れます。

却下・不承認の理由

1つの申請に複数の理由がつくことがあるため、理由の件数を足すと総数より多くなります。

却下の理由(計85件) 件数
添付書類が提出されなかった 37件
境界が明らかでない土地 23件
現に通路として使われている土地 22件
申請の権限がない人の申請 10件
建物がある土地 4件
水道用地・用悪水路・ため池として使われている土地 1件
不承認の理由(計100件) 件数
管理・処分を妨げる工作物・車両・樹木などが地上にある 46件
国による追加の整備が必要な森林 37件
国が管理費用以外の金銭債務を負う土地 12件
災害の危険を防ぐ措置が必要な土地 11件
所有権に基づく使用・収益が妨害されている 8件
管理に過分な費用がかかる崖(勾配30度以上かつ高さ5m以上)がある 7件
民法上の通行の権利が妨げられている 4件
地下に除去が必要な物がある 3件

山林では「国による追加の整備が必要な森林」が37件あり、不承認の理由の中で2番目に多くなっています。

取下げの理由

取下げの理由(計1,139件) 件数 割合(当サイト計算)
有効活用の見込みが生じた 586件 約51.4%
却下・不承認であることが判明した 405件 約35.6%
その他 148件 約13.0%

法務省は「有効活用の見込みが生じた」例として、次の3つを挙げています。

  • 自治体や国の機関による土地の有効活用が決まった
  • 隣の土地の所有者から引き受けの申し出があった
  • 農業委員会の調整などで、農地として使われる見込みになった

国庫帰属の手数料と負担金

申請できる人と対象外の土地

  • 申請できるのは、相続または相続人への遺贈で土地を取得した人です。売買で自分で買った土地は、基本的に対象外です
  • 共有地は、共有者全員で申請します
  • 制度開始(2023年4月27日)より前に相続した土地も対象です

申請できない土地(却下事由)は、建物がある土地、担保権などが設定されている土地、他人の利用が予定されている土地、土壌汚染がある土地、境界が明らかでない土地などです。建物がある土地は、登記の有無にかかわらず申請できません。

審査手数料

土地1筆あたり14,000円です(施行令第3条)。申請書に収入印紙を貼って納めます。取り下げた場合や、却下・不承認になった場合でも返ってきません。

負担金(10年分の管理費相当額)

承認されると、負担金を納めた時点で土地が国のものになります。通知が届いた翌日から30日以内に納めないと、承認が失効します。金額は政令(施行令第5条)で次のように決まっています。

土地の区分 負担金
宅地 20万円。ただし市街化区域(区域区分がない都市計画区域では用途地域)内の宅地は面積で計算
農地(主に農地として利用) 20万円。ただし市街化区域内、農用地区域内、土地改良事業などの区域内の農地は面積で計算
森林(主に森林として利用) 面積で計算
その他(原野・雑種地など) 20万円

面積で計算する場合の例です。政令の計算式に当てはめ、1,000円未満を切り捨てました(仮の面積による計算例です)。

区分 面積 計算式 負担金
市街化区域などの宅地 100㎡ 100㎡×2,720円+27万6,000円 54万8,000円
市街化区域などの宅地 200㎡ 200㎡×2,450円+30万3,000円 79万3,000円
農用地区域などの農地 500㎡ 500㎡×850円+29万8,000円 72万3,000円
農用地区域などの農地 1,000㎡ 1,000㎡×810円+31万8,000円 112万8,000円
森林 1,500㎡ 1,500㎡×24円+23万7,000円 27万3,000円
森林 3,000㎡ 3,000㎡×17円+24万8,000円 29万9,000円

面積が大きくなるほど、1㎡あたりの負担金は安くなる仕組みです。また、隣り合う2筆以上の土地が同じ区分なら、1筆とみなして負担金を計算するよう申し出ることができます(施行令第6条)。たとえば市街化区域外の宅地が2筆並んでいれば、40万円ではなく20万円になります。宅地と森林のように区分が違う土地はまとめられません。

相談と申請は、土地がある都道府県の法務局・地方法務局(本局)で受け付けています。支局・出張所では申請できません。

国庫帰属以外の手放し方

国庫帰属は条件が厳しく、費用もかかります。先に次の方法を検討する人も多いはずです。

方法 向いている土地 注意点
隣の人に売る・譲る どの地目でも。特に狭い土地、道路に接していない土地 境界の確認や測量をどうするか話し合いが必要。農地は隣の人も許可が必要
空き家・空き地バンクに登録する 宅地、一部の農地付き物件 登録は自治体を通して行う。利用条件は自治体ごとに違う
不動産会社に仲介・買取を頼む 宅地、雑種地 山林・農地は扱わない会社もある
自治体に寄附する 自治体が使う予定のある土地 受け付けない自治体が多い
相続放棄する 相続する前の段階で、財産全体を相続しない場合 3か月以内。土地だけの放棄はできない

空き家・空き地バンク

国土交通省の「全国版空き家・空き地バンク」は、各自治体の空き家バンクに登録された物件を、自治体をまたいで検索できる仕組みです。株式会社LIFULLとアットホーム株式会社が運営しています。空き家だけでなく空き地も対象ですが、登録の窓口は土地がある市町村です。空き地を受け付けているかどうかは、市町村に確認してください。

自治体への寄附

「市町村にあげればいい」と考える人もいますが、簡単ではありません。たとえば鹿児島市は、市として利用計画がある場合は受け付けるものの、現時点では利用計画がないため、土地の寄付(売却)は受け付けていないと案内しています。ほかの市町村でも、使い道のない土地は受け付けないことが多いと考えておきましょう。

相続放棄

相続放棄は、亡くなった人の財産を一切相続しない手続きです。

  • 自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てます
  • 費用は収入印紙800円分(1人につき)と、連絡用の郵便切手です
  • 田舎の土地だけを放棄して、預貯金は相続する、ということはできません
  • 放棄の時にその財産を現に占有している人は、次の相続人などに引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存する義務があります(民法第940条)

すでに相続して名義を変えた土地は、相続放棄では手放せません。

安く売ったときの「100万円控除」

田舎の土地を売って利益が出た場合、条件を満たせば譲渡所得から100万円を差し引ける特例があります(国税庁 No.3226、令和8年4月1日現在法令等)。

要件 内容
売った期間 令和2年7月1日から令和10年12月31日まで
場所 都市計画区域内にある低未利用土地等(使われていない、または周りに比べて利用の程度が著しく低い土地)
売った金額 上にある建物などの対価も含めて500万円以下(市街化区域、用途地域が定められた区域、所有者不明土地対策計画を作った市町村の区域などは800万円以下)
所有期間 売った年の1月1日時点で5年超
買主 親子や夫婦など「特別な関係」がある人ではないこと
売った後 その土地が利用されること
書類 市区町村長の確認書などを添えて確定申告

譲渡所得が100万円に満たない場合は、その金額が控除額になります。相続した土地の所有期間は、亡くなった人が取得した時期を引き継いで数えます(国税庁 No.3270)。

この特例は都市計画区域の外にある土地には使えません。山あいの山林や農地は、都市計画区域外にあることも多いので注意してください。都市計画区域かどうかは市町村の都市計画担当で、特例の使い方は税務署で確認してください。

建物付きの実家を売る場合は、別の特例(最大3,000万円控除)が使えることがあります。空き家特例の要件とチェックシートをご覧ください。

どの順番で検討する?

公的な決まった順番はありませんが、費用がかからない方法から順に検討すると整理しやすくなります。

  1. 名義と地目・現況を確認する(相続登記、登記事項証明書、固定資産税の通知書)
  2. 隣の土地の所有者に打診する(隣の人にとっては土地を広げる機会になることがある)
  3. 市町村に相談する(空き家・空き地バンク、農地なら農業委員会、山林なら林務担当)
  4. 不動産会社に相談する(宅地・雑種地)
  5. 国庫帰属を検討する(建物がないこと、境界がはっきりしていることを確認してから法務局に相談)

相談先のまとめ

相談したいこと 相談先
相続登記、国庫帰属制度 土地がある都道府県の法務局・地方法務局(本局)
農地の売却・貸し出し、転用 市町村の農業委員会
森林の届出、山林の扱い 市町村・都道府県の林務担当
空き家・空き地バンク、寄附の可否 市町村の空き家・空き地担当
都市計画区域・市街化区域かどうか 市町村の都市計画担当
100万円控除などの税金 税務署
相続放棄 家庭裁判所

よくある質問

田舎の土地を国に引き取ってもらうには、いくらかかりますか?

相続土地国庫帰属制度では、申請時に土地1筆あたり14,000円の審査手数料と、承認後に負担金がかかります。負担金は原則20万円ですが、市街化区域などの宅地・農地や、森林は面積に応じて計算します。たとえば森林1,500㎡なら、政令の計算式で27万3,000円です。

国庫帰属制度は、実際にどれくらい認められていますか?

法務省の統計(令和8年8月31日現在の速報値)では、申請5,997件に対し、国庫に帰属したのは3,119件です。却下は85件、不承認は100件、取下げは1,139件でした。取下げのうち586件は、自治体や隣の人に引き取られるなど「有効活用の見込みが生じた」ためです。

農地は誰にでも売れますか?

農地を農地のまま売るには、原則として農業委員会の許可(農地法第3条)が必要で、買う人は農業をする人に限られます。宅地などに変えて売る場合は、都道府県知事等の転用許可(農地法第5条)が必要です。詳しくは農業委員会に確認してください。

建物が残っている土地も国に引き取ってもらえますか?

できません。建物がある土地は申請の段階で却下されます。実際に法務省の統計でも、却下85件のうち4件が「建物の存する土地」を理由にしています。先に解体が必要です。

出典

2026年10月1日時点の情報です。制度は変わることがあるため、手続きの前に各窓口で確認してください。調べ方は調査方法にまとめています。