空き家にかかる税金の基本
実家が空き家になっても、土地と家屋を持っている限り、毎年固定資産税がかかります。市街化区域内であれば都市計画税もかかります。納税通知書は1年分がまとめて届き、年4回(東京23区は6月・9月・12月・2月)に分けて納めるのが一般的です。
| 項目 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|
| かかる場所 | すべての市町村(23区は東京都が課税) | 原則として都市計画法の市街化区域内 |
| 税率 | 標準税率1.4%(地方税法第350条) | 上限0.3%(地方税法第702条の4) |
| 誰が払うか | 1月1日時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている人 | 同じ |
| いつの状況で決まるか | 1月1日(賦課期日、地方税法第359条) | 同じ |
| 税額の計算 | 課税標準額 × 税率 | 課税標準額 × 税率 |
税率は市町村の条例で決まります。1.4%は「標準税率」で、これと違う税率の市町村もあります。都市計画税は0.3%が上限で、それより低い税率の市町村もあります。
また、同じ市町村の中で持っている土地・家屋の課税標準額の合計が免税点に届かなければ、固定資産税はかかりません。総務省によると、免税点は土地30万円・家屋20万円です(令和9年度分からは家屋30万円)。
住宅用地特例:家が建っている土地は税金が軽い
人が住むための家屋の敷地(住宅用地)は、土地の課税標準額が次のように軽くなります(地方税法第349条の3の2、第702条の3)。
| 区分 | 面積 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|---|
| 小規模住宅用地 | 住宅1戸につき200㎡以下の部分 | 評価額 × 1/6 | 評価額 × 1/3 |
| 一般住宅用地 | 200㎡を超える部分(家屋の床面積の10倍まで) | 評価額 × 1/3 | 評価額 × 2/3 |
空き家でも、1月1日時点で住宅として建っていれば、原則としてこの特例の対象です。一方、東京都主税局は、次のような土地を住宅用地に当たらない例に挙げています。
- 空地(住宅建築予定地を含む)
- 住宅を建築中の土地
- 外部に貸している駐車場、資材置場
- 店舗・事務所・倉庫などの敷地
東京都主税局は、1月1日時点で住宅がなければ、建築中や建築予定の土地でも住宅用地にならないと案内しています(建て替えなどで一定の要件を満たす場合は、申告により特例を続けられる場合があります)。解体したあとに家を建てる予定がない場合は、翌年度から特例が外れると考えておきましょう。
住宅用地特例が外れる3つのケース
| ケース | いつから外れるか | 根拠 |
|---|---|---|
| 家を解体して更地にした | 解体後、最初の1月1日を迎えた年度から | 地方税法第349条の3の2(住宅の敷地でなくなるため) |
| 「管理不全空家等」として勧告を受けた | 勧告後、1月1日までに必要な措置をしなかった場合、その年度から | 地方税法第349条の3の2、空家法第13条第2項 |
| 「特定空家等」として勧告を受けた | 同上 | 地方税法第349条の3の2、空家法第22条第2項 |
家の用途を変えた場合(住宅から店舗にするなど)や、庭を駐車場として貸した場合なども、住宅用地の範囲が変わることがあります。東京都主税局は、住宅を取り壊した場合などは「固定資産税の住宅用地等申告書」を翌年1月31日までに出すよう案内しています。申告の方法や期限は市区町村ごとに確認してください。
空家法の改正と「管理不全空家」
空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)は2023年6月14日に改正法が公布され、2023年12月13日に施行されました。改正前は、倒壊の危険が高いなど状態がとても悪い「特定空家等」だけが勧告の対象でした。改正後は、その手前の「管理不全空家等」も指導・勧告の対象になり、勧告を受けると住宅用地特例が外れるようになりました(国土交通省)。
| 段階 | どんな空き家か | 市区町村ができること | 所有者への影響 |
|---|---|---|---|
| 管理不全空家等 | 適切に管理されておらず、放置すれば特定空家等になるおそれがある | 指導 → 勧告(空家法第13条) | 勧告で住宅用地特例が外れる |
| 特定空家等 | 倒壊など保安上危険、衛生上有害、景観を著しく損なうなどのおそれがある | 助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行(空家法第22条) | 勧告で住宅用地特例が外れる。命令に違反すると50万円以下の過料(空家法第30条) |
代執行(市区町村が所有者に代わって解体などをすること)の費用は、所有者が負担します。改正で、命令などの手続きを経るいとまがない緊急時の代執行も設けられました。
国土交通省・総務省の調査では、令和6年度(2024年度)の1年間に、全国の市区町村が管理不全空家等に行った指導は2,545件、勧告は378件でした。特定空家等への勧告は600件、命令は101件です。
どんな状態が「管理不全空家」になるのか
国土交通省のガイドラインでは、次のような状態が「管理不全空家」の例として挙げられています(概要資料より抜粋)。最終的には市区町村が個別に判断します。
| 観点 | 管理不全空家の状態の例 |
|---|---|
| 建物の倒壊 | 構造部材の破損、腐朽、蟻害、腐食など |
| 部材の落下・飛散 | 屋根ふき材、外装材、雨樋などの破損、支持部材の腐食 |
| 立木 | 伐採・補強がされておらず、腐朽が認められる/枝がはみ出している |
| 衛生 | 排水設備の破損、常態的な水たまりや腐ったごみ、動物の棲みつき |
| 景観 | 屋根や外壁などの色あせ・破損・汚損を補修していない |
| 防犯・生活環境 | 窓など開口部の破損、雪下ろしがされていない |
ガイドラインでは、こうした状態にならないための「管理指針」として、一定の頻度で屋根ふき材・排水設備・立木を点検し、補修や伐採をすることなどが示されています。
計算例:家がある場合・解体した場合・勧告を受けた場合
以下は仕組みを説明するための仮の数字です。都市計画税0.3%、固定資産税1.4%とし、負担調整措置は考えず、住宅用地は特例の率がそのまま適用されている(負担水準100%)と仮定しています。実際の税額は、評価額、負担調整措置、市区町村独自の減額・減免、端数処理などで変わります。
前提(仮):土地150㎡(すべて小規模住宅用地)、土地の評価額900万円、家屋の評価額100万円、市街化区域内
| 項目 | 家がある | 解体して更地 | 家はあるが勧告を受けた |
|---|---|---|---|
| 土地の課税標準(固定資産税) | 900万円×1/6=150万円 | 900万円×70%=630万円(上限) | 630万円(上限) |
| 土地の固定資産税 | 21,000円 | 88,200円 | 88,200円 |
| 土地の都市計画税 | 900万円×1/3×0.3%=9,000円 | 630万円×0.3%=18,900円 | 18,900円 |
| 家屋の固定資産税・都市計画税 | 14,000円+3,000円 | 0円 | 14,000円+3,000円 |
| 合計(年額) | 47,000円 | 107,100円 | 124,100円 |
「6倍」にはならない理由
住宅用地特例の1/6がなくなると、住宅がない宅地は「商業地等」として扱われます。総務省の資料では、商業地等の課税標準額は評価額の70%と負担調整後の額のいずれか低い方とされています。そのため、200㎡以下の部分の土地の固定資産税は、上限まで上がっても約4.2倍(70% ÷ 1/6)が目安で、6倍にはなりません。
さらに、負担調整措置では、負担水準(評価額に対する前年度課税標準額の割合)が60%未満の商業地等は、前年度課税標準額に評価額の5%を加えた額に抑えるなど、急な上昇をならす仕組みがあります。ただし、解体した翌年度にどの額が「前年度課税標準額」として使われるかは、地方税法附則の定めや市区町村の扱いにかかわり、この記事では確認できていません(未確認)。1年目から上限の約4.2倍になるのか、段階的に上がるのかは、市区町村の資産税担当課に確認してください。
地域独自の軽減もあります。たとえば東京23区では、商業地等の負担水準の上限を70%から65%に引き下げる条例減額や、小規模住宅用地の都市計画税を半分にする軽減が行われています。解体した後の土地の税金を減らす制度を設けている市町村もあります。たとえば千葉市は、2026年8月1日以降に空き家を除却した土地について、固定資産税・都市計画税の増加分を減免する制度を設けています(→千葉市の解体補助金)。
空き家の維持費:どんな項目があるか
空き家の維持費について、公的な「平均額」は見つかりませんでした。国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」には、年間の維持管理費用(管理委託料、電気・ガス・水道などの契約費用、空き家までの交通費、税金などを含む)の分布があります。
| 年間の維持管理費用 | 割合 |
|---|---|
| 費用はかかっていない | 12.1% |
| 1万円未満 | 10.6% |
| 1〜3万円未満 | 14.1% |
| 3〜5万円未満 | 11.0% |
| 5〜10万円未満 | 15.6% |
| 10〜20万円未満 | 16.7% |
| 20〜30万円未満 | 8.5% |
| 30万円以上 | 8.5% |
| 不明 | 2.9% |
5万円未満が合わせて約5割、最も多いのは「10〜20万円未満」の約17%です。ただしこれは回答者の申告にもとづく分布で、地域・建物の大きさ・管理の方法で大きく変わります。自分の場合は、次の項目を1年分書き出して見積もるのが確実です。
| 項目 | 内容・確認先 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 納税通知書・課税明細書 |
| 火災保険・地震保険 | 空き家になったことを保険会社に伝え、契約の条件を確認 |
| 電気・水道・ガスの基本料金 | 通水や換気のために契約を残す場合。解約するかは管理の方法しだい |
| 草刈り・庭木の剪定 | 自分で行うか、業者・シルバー人材センターなどに依頼 |
| 修繕 | 屋根・雨樋・外壁・窓などの破損の補修 |
| 空き家管理サービス | 委託する場合の月額料金 |
| 交通費 | 実家まで通う費用 |
| 町内会費など | 地域によって |
管理の方法
国土交通省の調査では、空き家を管理しているのは「所有者または同居の親族」が約77%、「同居していない親族」が約14%で、約9割が所有者や親族です。「誰も管理していない」も約4%ありました。管理者がいる空き家では「月に1〜数回」の管理が約34%で最も多く、月1回以上を合わせると約7割です。管理の課題は「管理の作業が大変」(約32%)、「利用する予定がないので管理しても無駄になる」(約27%)、「遠方に住んでいるので往訪が困難」(約22%)などでした。
| 方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 自分や親族が通う | 通風・換気、通水、郵便物の確認、雨漏りの点検、草刈りなど | 遠方だと交通費と時間がかかる |
| 空き家管理サービスに委託 | 不動産会社や管理専門業者などが見回り・報告をする | 空き家管理を対象にした国の資格や登録の制度は、確認できた範囲では見当たりません(未確認)。作業の範囲、頻度、報告の方法、鍵の預け方を契約前に確認 |
| 近所の人や自治会に頼む | 異変があったときの連絡 | 連絡先を伝えておく |
| 市区町村の相談窓口 | 空き家の相談、空き家バンクへの登録、補助金の案内 | 窓口の名前は自治体ごとに違う |
| 空家等管理活用支援法人 | 市区町村が指定したNPO法人などが所有者の相談に応じる(2023年改正で新設) | 令和7年3月末時点で指定済みは95法人。住んでいる地域に指定があるかは市区町村に確認 |
使う予定がないなら、持ち続ける以外の方法も比べておきましょう。空き家バンクへの登録や売却は田舎の実家が売れない時の処分方法、相続した家を売るときの税金の特例は空き家特例(3,000万円控除)にまとめています。
相続登記と、納税通知書の送り先
親が亡くなって相続登記がされていない場合、固定資産税はどうなるのでしょうか。国立市の案内では、相続登記がされていないときは、法定相続人全員が「現所有者」として連帯して納税義務を負うとしています。
| 手続き | 内容 | 根拠・例 |
|---|---|---|
| 相続人代表者指定届 | 相続人が2人以上いるとき、納税通知書などを受け取る代表者を決めて届け出る | 地方税法第9条の2 |
| 現所有者の申告 | 登記上の所有者が亡くなっているとき、現に所有している人が住所・氏名などを申告する(市区町村の条例で定める) | 地方税法第384条の3 |
| 相続登記 | 2024年4月から義務化 | →相続登記の義務化 |
国立市では、この2つを1枚にした「相続人代表者指定届(兼固定資産現所有者申告書)」を使い、翌年度から課税台帳の名義を相続人の共有名義にして、代表者に納税通知書を送っています。この届出で登記簿の名義は変わらず、相続登記がされれば登記が優先されます。届出の名前や様式は市区町村によって違います。
地方税法では、相続人が代表者を届け出ず、相続人の一部が明らかでないなどの場合は、市区町村長が相続人の一人を代表者に指定できるとされています。
持ち続けるときのチェックリスト
- 課税明細書で、土地の評価額・住宅用地の区分・税額を確認した
- 相続人代表者の届出、または相続登記を済ませた
- 火災保険の会社に、空き家になったことを伝えた
- 誰が、どのくらいの頻度で管理するかを決めた
- 屋根・雨樋・外壁・窓・庭木を定期的に点検している
- 近所の人に連絡先を伝えた
- 解体を考えるときは、翌年度からの税額の変化と、解体補助金・除却後の減免制度を市区町村に確認する
- 売却するなら、空き家特例の期限(相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ2027年12月31日まで)を確認した
よくある質問
空き家を解体すると固定資産税は6倍になりますか?
単純に6倍にはなりません。住宅がなくなると土地は「商業地等」と同じ扱いになり、課税標準額は評価額の70%が上限です(総務省「固定資産税の概要」)。200㎡以下の部分で比べると、上限まで上がった場合で土地の固定資産税は約4.2倍(70% ÷ 1/6)が目安です。実際の上がり方は負担調整措置や市区町村独自の減額・減免によって変わるため、資産税の担当課で確認してください。
空き家でも、家が建っていれば住宅用地特例は使えますか?
1月1日時点で人が住むための家屋の敷地であれば、空き家でも原則として住宅用地として扱われます。ただし、空家法にもとづき「管理不全空家等」または「特定空家等」として市区町村から勧告を受けると、その敷地は住宅用地特例の対象から外れます(地方税法第349条の3の2)。
年の途中で解体したら、その年の税金も上がりますか?
固定資産税の賦課期日は1月1日です(地方税法第359条)。その年度の税額は1月1日時点の状況で決まるため、年の途中で解体しても、その年度の税額は変わりません。翌年1月1日に家がなければ、翌年度から住宅用地特例が外れます。
相続登記をしていない実家の固定資産税は誰に届きますか?
相続登記がされていない場合、相続人全員が連帯して納税義務を負います。多くの市区町村では「相続人代表者指定届」を出してもらい、指定された代表者に納税通知書を送っています(例:国立市)。届出がないと、市区町村が相続人の一人を代表者に指定することもあります(地方税法第9条の2)。
あわせて読みたい
出典
- 総務省「固定資産税の概要」
- 地方税法(e-Gov法令検索)第349条の3の2、第350条、第359条、第384条の3、第702条の3、第702条の4、第9条の2
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov法令検索)
- 国土交通省 空き家対策特設サイト「空家法とは」
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」(管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関するガイドライン等)
- 国土交通省「管理指針、管理不全空家の参考基準」(ガイドライン概要資料)
- 国土交通省・総務省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(令和7年3月31日時点)」
- 国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)
- 東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」
- 東京都主税局「『特定空家等』または『管理不全空家等』に該当すると土地に対する固定資産税・都市計画税の税額が高くなる場合があります。」
- 東京都主税局「住宅用地の申告等をお願いしています」
- 国立市「相続人代表者指定届(兼固定資産現所有者申告書)」
- 国土交通省「全国版空き家・空き地バンク」
- 千葉市「空き家の除却に関する補助・減免」
2026年9月30日時点の情報です。制度は変わることがあるため、手続きの前に各窓口で確認してください。調べ方は調査方法にまとめています。