実家じまいとは
実家じまいとは、親が住んでいた家について、中の物を片付け、名義を整え、家そのものの行き先(売る・貸す・解体する・残す)を決めることです。 お墓や仏壇の引き継ぎまで含めて考える人も多くいます。
「家を片付ける」というイメージが強い言葉ですが、実際には次のような手続きと判断がまとめてやってきます。
- 家財の片付け・処分
- 名義の変更(相続登記)
- 空き家の管理と税金
- 売却・賃貸・解体の判断と、補助金や税の特例の申請
- お墓・仏壇の引き継ぎ
なぜ今、実家じまいが課題になっているのか
空き家は900万戸を超えた
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家は900万2千戸で過去最多、空き家率は13.8%で過去最高でした。このうち、賃貸・売却用や別荘などを除いた「使い道が決まっていない空き家」は385万6千戸で、5年前より36万9千戸増えています。
期限のある手続きが増えた
ここ数年の法改正で、相続した家を「とりあえずそのままにしておく」ことが難しくなりました。
| 制度 | 始まった時期 | 内容 |
|---|---|---|
| 相続登記の義務化 | 2024年4月1日 | 不動産の相続を知った日から3年以内に登記。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象 |
| 空家法の改正 | 2023年12月13日 | 「管理不全空家」を新設。勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例が外れる |
| 所有不動産記録証明制度 | 2026年2月2日 | 亡くなった人名義の不動産を一覧で証明してもらえる |
| 住所・氏名変更登記の義務化 | 2026年4月1日 | 変更から2年以内に登記。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象 |
2024年4月より前に相続した不動産も義務の対象で、原則として2027年3月31日までに相続登記が必要です。
実家じまいの全体の流れ
大きく分けると、次の順に進みます。詳しいやり方は実家じまいの手順にまとめています。
- 親が元気なうちに話し合う:家をどうしたいか、書類や鍵、通帳の場所、名義を確認する
- 相続が始まったら、相続するかを決める:相続放棄の期限は3か月
- 名義を相続人に移す:相続登記は3年以内
- 家財を片付ける:必要な物を分け、残りを処分する
- 家の行き先を決める:売る・貸す・解体する・残す
- お墓・仏壇を引き継ぐか、しまうかを決める
家の行き先の選択肢
| 選択肢 | 向いている場合 | 使える制度・注意点 |
|---|---|---|
| 売る | 買い手が見込める立地 | 条件を満たせば、売却益から最大3,000万円を控除できる特例(2027年12月31日までの売却) |
| 貸す | 立地がよく、修繕すれば使える | 修繕費と管理の手間がかかる |
| 解体して土地にする | 老朽化が進み、倒壊などの危険がある | 多くの市区町村に解体補助金がある。解体後は土地の固定資産税が上がることがある |
| 残して管理する | 将来使う予定がある | 定期的な換気・清掃・草刈りが必要。放置すると勧告の対象になりうる |
| 国に引き取ってもらう | 建物がない土地で、引き受け手がいない | 相続土地国庫帰属制度。審査手数料1筆14,000円、負担金は原則20万円。建物がある土地は申請できない |
| 相続放棄する | 家を含めて財産を相続しない | 3か月以内に家庭裁判所へ。実家だけを放棄することはできない |
解体を考えている場合:解体補助金は、市区町村ごとに補助率も上限額も違います。当サイトでは各市区町村の公式ページを確認して一覧にしています。→ 空き家の解体補助金 市区町村別データ
期限のある手続きのまとめ
| 手続き | 期限 | 窓口 |
|---|---|---|
| 相続放棄 | 自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内(家庭裁判所で延長の申立てができる) | 亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所 |
| 相続登記 | 相続と不動産の取得を知った日から3年以内 | 不動産のある地域の法務局 |
| 住所・氏名変更登記 | 変更から2年以内 | 法務局 |
| 空き家の3,000万円控除 | 相続開始から3年目の年の12月31日までに売却(制度自体は2027年12月31日まで) | 税務署 |
| 解体補助金 | 市区町村ごとの受付期間。年度途中で予算に達して終わることが多い | 市区町村 |
よくある失敗
- 無許可の不用品回収業者に頼む:家庭の不用品の回収には、市区町村の一般廃棄物処理業の許可(または委託)が必要です。国民生活センターには、広告で7,000円だったのに作業後に25万円を請求された、といった相談が寄せられています。
- 補助金の交付決定より先に解体工事を始める:ほとんどの市区町村で、交付決定前に着工した工事は補助の対象外です。
- 空き家を放置して勧告を受ける:勧告を受けると、土地の固定資産税の住宅用地特例(小規模住宅用地なら課税標準が6分の1)が外れます。
- 登記を後回しにする:相続人が亡くなって相続が重なると、関係者が増えて話し合いがまとまりにくくなります。
困ったときの相談先
| 相談したいこと | 窓口 |
|---|---|
| 相続登記・所有不動産の確認 | 法務局(相談は予約制のところが多い)、司法書士 |
| 相続税・3,000万円控除 | 税務署、税理士 |
| 相続放棄 | 家庭裁判所、弁護士 |
| 空き家の管理・解体補助金 | 市区町村の空き家担当課 |
| 業者とのトラブル | 消費生活センター(消費者ホットライン188) |
よくある質問
実家じまいは、いつから始めればいいですか?
親が元気なうちに、家の名義や書類の場所、親の希望を話し合っておくのが理想です。相続が起きてからは、相続放棄の3か月、相続登記の3年など、期限のある手続きが続きます。
実家を相続しない方法はありますか?
家庭裁判所で相続放棄をする方法があります。期限は、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内です。ただし実家だけを放棄することはできず、預貯金などほかの財産もすべて相続しないことになります。
実家を放置するとどうなりますか?
管理が不十分な空き家は、市区町村から「管理不全空家」や「特定空家」として指導や勧告を受けることがあります。勧告を受けると、土地の固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が大きく増えることがあります。
あわせて読みたい
出典
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(確報集計)結果の概要」
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 法務省「住所等変更登記の申請義務化について」
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」
- 国税庁 タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」
- 裁判所「相続の放棄の申述」
- 国民生活センター「不用品回収サービスのトラブルに注意」(2022年11月2日)
2026年9月28日時点の情報です。制度は変わることがあるため、手続きの前に各窓口で確認してください。調べ方は調査方法にまとめています。