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売却・買取

兄弟の共有名義になった実家を手放す方法|自分の持分だけ売る・共有物分割・連絡がつかない共有者

更新日 2026年10月6日公的機関の資料をもとに作成

兄弟で実家を共有していると、一人が「売りたい」と思っても、家全体はすぐには売れません。ただ、話し合いがまとまらないときや、連絡がつかない兄弟がいるときに使える方法も法律で決まっています。まずは「遺産分割が終わっているか」を確かめるところから始めましょう。

最初に確かめる2つのこと

1. 誰が、どれだけの持分を持っているか

実家の土地と建物の登記事項証明書を取ると、所有者と持分(2分の1、3分の1など)が分かります。法務局の窓口・郵送で1通600円、オンラインで請求して郵送で受け取ると520円、窓口で受け取ると490円です(2025年4月1日からの手数料)。

相続登記がまだなら、期限に注意してください。 相続で不動産を取得した人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法第76条の2・第164条)。2024年4月1日より前の相続も対象で、その場合の期限は2027年3月31日です。詳しくは相続登記の義務化を参照してください。

2. 遺産分割が終わっているか

相続人が複数いると、遺産分割が終わるまで、相続財産は相続人の共有になります(民法第898条)。この段階の共有と、遺産分割で「兄弟で共有する」と決めたあとの共有とでは、使える手続きが違います。

状態 話し合いがまとまらないとき
遺産分割がまだ(法定相続分で登記しただけの場合も含む) 原則として遺産分割の手続きによる。協議が調わなければ家庭裁判所に請求する(民法第907条)。裁判所での共有物分割は、原則として使えない(第258条の2第1項)
遺産分割で共有にすると決めた 共有物分割の手続きによる。協議が調わなければ地方裁判所に請求する(第258条)
相続開始から10年たった 遺産分割前でも、共有物分割の裁判を使えるようになる。ただし、ほかの相続人が期限内に異議を出すと使えない(第258条の2第2項・第3項)

手放す方法は6つ

方法 内容 必要な同意
1. 全員で家全体を売る 共有者全員が売主になって売り、代金を持分で分ける 全員の同意(民法第251条)
2. 兄弟の持分を買い取る・兄弟に売る 共有者の一人に持分を集めて、単独名義にする 売る人と買う人の合意
3. 自分の持分だけを売る 持分を第三者(持分を買い取る不動産会社など)に売る 買主との合意
4. 共有物分割を裁判所に求める 協議が調わないときに、地方裁判所に分け方を決めてもらう 不要(裁判所が決める)
5. 所在不明の共有者の持分を取得・譲渡する 連絡がつかない共有者がいるときの裁判所の手続き 不要(裁判所が決める)
6. 国に引き取ってもらう(相続土地国庫帰属制度) 土地を国に引き取ってもらう 共有者全員で申請

1. 全員で家全体を売る

いちばん高く売れやすく、手続きも単純な方法です。家全体を売ることは民法の「変更」に当たるため、共有者全員の同意が必要です(第251条第1項)。不動産会社への依頼、売買契約、登記は共有者全員で行います。

2. 兄弟の持分を買い取る・兄弟に売る

実家に住み続けたい兄弟がいる場合は、その人が他の兄弟の持分を買い取って単独名義にする方法があります。価格は当事者で決めますが、時価より著しく低い価格で譲り受けると、時価との差額は贈与を受けたものとみなされ、贈与税の対象になることがあります(国税庁タックスアンサーNo.4423)。価格の決め方は、税理士や不動産鑑定士に相談すると安心です。

3. 自分の持分だけを売る

家全体の売却とは違い、自分の持分を売ることを禁じる規定は民法にはなく、共有持分だけを買い取る不動産会社もあります。ほかの共有者が反対していても、自分だけ共有から抜けたいときの選択肢です。

ただし、次の点に注意してください。

  • 買主は、ほかの共有者と一緒に家を共有することになります。持分だけでは家を自由に使えないため、買い手は限られます
  • 買主が、ほかの共有者に持分の買い取りや共有物分割を求めることがあり、兄弟との関係に影響します
  • 売る前に、まずほかの共有者に「持分を買い取る気はないか」を聞いておくと、後のトラブルを減らせます

4. 共有物分割を裁判所に求める

遺産分割で共有にすると決めたあとは、各共有者はいつでも共有物の分割を求められます(第256条)。協議が調わないときは、地方裁判所に分割を請求できます(第258条)。裁判所が命じる分け方は次の3つです。

  • 現物分割:土地を分筆して分ける
  • 賠償分割:一人が家を取得し、ほかの共有者に代金を払う
  • 競売:上の方法で分けられないときや、分けると価値が大きく下がるおそれがあるとき

実家のように1軒の家だけのときは、現物では分けにくいことがあります。競売になると、売る時期や価格を共有者が決められなくなるため、裁判の前に、話し合いで売る方法を探っておくのが現実的です。共有物分割の訴えは、不動産の所在地の地方裁判所にも起こせます。

5. 連絡がつかない共有者がいるとき

2023年4月1日に施行された改正民法で、所在が分からない共有者がいても、裁判所の手続きで次のことができるようになりました。

手続き 内容
所在等不明共有者の持分の取得(第262条の2) 申し立てた共有者が、所在不明の共有者の持分を取得する
所在等不明共有者の持分の譲渡(第262条の3) 所在不明の共有者の持分を、第三者に譲渡する権限をもらう。ほかの共有者全員が、同じ第三者に持分の全部を譲渡するときに限る

東京地方裁判所の案内では、手続きの概要は次のとおりです。

  • 申立先:不動産の所在地を管轄する地方裁判所
  • 申立手数料:収入印紙1,000円 × 対象の持分の数(持分の取得は、さらに × 申立人の数)
  • 予納金:官報公告の費用として7,134円から。ほかに郵便切手6,000円分
  • 供託:裁判所が定める金額(持分の時価相当額などを考慮)を供託する必要がある
  • 期間:申立てがあったことなどが公告され、異議の届出期間は3か月以上(非訟事件手続法第87条)

切手代などは裁判所によって違うことがあります。また、所在不明の共有者の持分がまだ遺産分割をしていない相続財産のときは、相続開始から10年たたないと、この手続きは使えません。

6. 国に引き取ってもらう

相続土地国庫帰属制度を使うと、相続した土地を国に引き取ってもらえます。共有の土地は共有者全員が共同で申請する必要があります。また、建物が建っている土地は申請できないため、実家の家屋が残っているうちは使えません。制度の詳細は田舎の実家が売れない時の処分方法にまとめています。

共有のままにしておくと

  • 住んでいる兄弟との精算:共有物を使っている共有者は、取り決めがない限り、自分の持分を超えて使っている分の対価をほかの共有者に払う義務があります(民法第249条第2項)
  • 管理の決め方:賃貸に出すなどの管理は、持分の価格の過半数で決めます(第252条)。ただし、建物を3年を超えて貸すなど長い期間の契約は、管理の範囲を超えます
  • 税金:共有物にかかる地方税は、共有者が連帯して納める義務を負います(地方税法第10条の2)。固定資産税の納税通知書が代表者一人に届いても、ほかの共有者も無関係ではありません
  • 相続が重なる:共有者が亡くなると、その持分はさらにその相続人に分かれ、共有者が増えていきます。話し合いは時間とともに難しくなります

売ったときの税金

内容 ポイント
申告 国税庁の共有のマイホームの説明では、譲渡所得の計算は持分に応じて行い、確定申告は一人一人が提出する
マイホームの3,000万円控除 共有者ごとに要件を判定し、要件を満たせば共有者1人につき最高3,000万円
空き家の3,000万円控除 親が一人で住んでいた家などを相続して売る場合の特例。2024年1月1日以後の譲渡で、家屋と敷地を相続した相続人が3人以上だと1人2,000万円まで。2027年12月31日までの譲渡が対象
取得費が分からない 親が買った値段が分からないときは、売った金額の**5%**を取得費にできる

空き家の特例には、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る、売却代金が1億円以下などの要件があります。詳しくは空き家の3,000万円特別控除を参照してください。

不動産会社に相談するときに確かめること

  • 宅地建物取引業の免許:国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で、免許番号が有効か確認できます
  • 仲介か買取か:仲介は不動産会社が買主を探す方法、買取は不動産会社自身が買う方法です。どちらで進めるのかを最初に確認しましょう
  • 査定の根拠:持分の査定額が、家全体の価格のどれくらいに当たるのか、理由を説明してもらいましょう。複数の会社の査定を比べるのが基本です

共有者との交渉、裁判所の手続き、相続放棄との関係など、法律の判断が必要な場面では、弁護士・司法書士に相談してください。この記事は一般的な仕組みの説明で、個別の事情に当てはまるかを保証するものではありません。

よくある質問

兄弟の一人が反対していても、実家を売れますか?

家全体を売るには、共有者全員の同意が必要です(民法第251条)。反対する人がいる場合は、他の共有者との持分の売買、自分の持分だけの売却、裁判所での共有物分割などを検討します。まだ遺産分割をしていない場合は、原則として遺産分割の手続きによります。

共有している実家に兄弟の一人が住んでいます。家賃をもらえますか?

民法第249条第2項では、共有物を使っている共有者は、別に取り決めがない限り、自分の持分を超えて使っている分の対価を他の共有者に支払う義務があるとされています。金額や請求の方法は事情によって変わるので、弁護士などに相談してください。

連絡がつかない兄弟がいて、話し合いができません。

所在が分からない共有者がいるときは、地方裁判所の手続きで、その共有者の持分を取得したり、第三者に譲渡する権限を得たりできます(民法第262条の2・第262条の3)。ただし、まだ遺産分割をしていない相続財産の場合は、相続開始から10年たたないと使えません。

共有の実家を売ったら、税金は誰が申告しますか?

国税庁のマイホームの特例の説明では、譲渡所得の計算は共有者の持分に応じて行い、確定申告は一人一人が提出するとされています。空き家の特例を使える場合もあるので、売る前に税務署か税理士に確認してください。

出典

2026年10月6日時点の情報です。制度は変わることがあるため、手続きの前に各窓口で確認してください。調べ方は調査方法にまとめています。