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売却・買取

実家で親が亡くなっていたとき|事故物件になる?売るときの告知のルールと売り方

更新日 2026年10月6日公的機関の資料をもとに作成

親が実家で亡くなったことは、それだけで売れなくなる理由にはなりません。国のガイドラインでは、病気や老衰による自然死は原則として告げなくてよいとされています。一方で、発見が遅れて特殊清掃が必要になった場合などは扱いが変わります。分かっている事実を整理し、隠さずに相談することが、後のトラブルを防ぐいちばんの方法です。

自宅で亡くなる一人暮らしの人の数

警察庁によると、2025年に警察が取り扱った遺体20万4,562体のうち、自宅で亡くなった一人暮らしの人は7万6,941体(37.6%)で、そのうち65歳以上が5万8,919体でした。

死亡から発見までの日数を見ると、同じ年の資料の数字から計算して、8日以上たって見つかった人は約29%、31日以上は約9%でした。実家で一人暮らしをしていた親が亡くなり、発見が遅れることは、決してまれなことではありません。

この統計は「孤独死」を定義して数えたものではなく、警察が取り扱った遺体のうち「自宅において死亡した一人暮らしの者」の数です。

ガイドラインは何を決めているか

国土交通省は2021年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を出しました。

  • 対象は、居住用の不動産の売買・賃貸です
  • 内容は、**不動産会社(宅地建物取引業者)**が、買主・借主に何を告げるべきかの整理です
  • 売主自身の告知の義務は、裁判例では信義則にもとづき、取引の目的・事案の内容・経過した時間・近隣で知られている程度などを考えて判断されているとしています
  • ガイドラインに沿って対応しても、民事上の責任を必ず避けられるわけではないとも書かれています

告げなくてよい場合・告げる場合(売買)

亡くなり方・状況 売買での扱い
老衰・持病による病死などの自然死 原則として告げなくてよい(経過期間の定めなし)
自宅の階段からの転落、入浴中の事故、食事中の誤嚥など日常生活の中での不慮の死 原則として告げなくてよい
上の2つでも、長く人知れず放置されたことなどで特殊清掃や大規模なリフォームが行われた 告げる対象になる
自死・他殺など、上の2つ以外の死 告げる対象になる
隣の住戸や、日常使わない共用部分で起きた死(マンションなど) 原則として告げなくてよい(事件性や社会的な影響が特に大きい場合を除く)
期間や死因にかかわらず、買主から聞かれた場合 告げる必要がある

賃貸では「おおむね3年」がたてば原則として告げなくてよいという目安がありますが、売買にはこの目安は示されていません。

告げる内容

告げる場合の内容は、次のとおりです。

  • 事案の発生時期(特殊清掃などが行われた場合は、発覚した時期)
  • 場所
  • 死因の別(自然死・事故死・自死・他殺など。不明なら不明と伝える)
  • 特殊清掃などが行われた場合は、その旨

亡くなった人や遺族の名誉と生活の平穏に配慮し、氏名・年齢・住所・家族構成や、具体的な死の態様・発見の状況などは告げる必要はないとされています。告げるときは、書面で渡すことが望ましいとされています。

売主として気をつけること

告知書には事実を書く

不動産会社に売却を頼むと、売主は「告知書(物件状況等報告書)」に、物件で起きたことを書くよう求められます。ガイドラインでは、不動産会社はこの告知書への記載を求めることで、調査の義務を果たしたものとされています。つまり、事実を伝えるのは売主の役目です。不動産会社は、売主が故意に告げなかった場合などは民事上の責任を問われる可能性があることを、事前に伝えることが望ましいとされています。

隠すと、売ったあとで責任を問われることがある

民法では、引き渡した物が契約の内容に合わないとき、買主は修補・代金の減額・損害賠償・契約の解除を求められます(第562条〜第564条)。

  • 買主は、不適合を知ってから1年以内に売主に通知すればよいとされています。ただし、売主が引き渡しの時に不適合を知っていた場合などは、この1年の制限はかかりません(第566条)
  • 「責任を負わない」という特約を結んでいても、売主が知りながら告げなかった事実については、責任を免れません(第572条)

人の死がどこまで「契約の内容に合わない」に当たるかは、ガイドラインにも法務省の説明資料にも書かれておらず、事案ごとに判断されます。分かっている事実は、隠さずに伝えておくのが安全です。

買取業者に直接売る場合

ガイドラインは、個人の売主が不動産会社に直接売る場面を正面からは扱っていません。ただし、民法第572条の考え方は買主が業者でも変わらず、業者が買い取った家を売り直すときは、業者自身が売主としてガイドラインの対象になります。「業者に売るなら伝えなくてよい」という考え方には裏付けがないので、業者にも事実を伝えましょう。

売り方を考える

方法 内容 注意点
仲介で売る 不動産会社が買主を探す 告げる対象になる場合は、告知したうえで買主を探す
買取業者に売る 不動産会社が自ら買い取る 複数社の査定を比べる。宅地建物取引業の免許を国土交通省の検索システムで確認する
解体して土地で売る 建物を取り壊してから売る 取り壊した後の土地の取引は、ガイドラインの対象外。告げなくてよいと決まっているわけではない

宅地建物取引業者には、取引の相手の判断に重要な影響を及ぼす事実を、故意に告げなかったり、事実と違うことを告げたりすることが禁じられています(宅地建物取引業法第47条)。不動産会社が説明を省こうとするなど不安があれば、ほかの会社にも相談しましょう。

片付けと相続放棄の注意

相続放棄を考えているなら、片付けや処分の前に専門家に相談してください。 相続財産を処分すると、相続を承認したものとみなされます(民法第921条)。遺品の廃棄や特殊清掃の発注が、ここでいう「処分」に当たるのか、財産を守るための「保存行為」に当たるのかを説明した公的な資料は見つかりませんでした。

  • 家財の所有権は、亡くなった時点で相続人に引き継がれます(民法第896条)
  • 2023年4月の民法改正で、相続放棄をした人が財産を保存する義務は、放棄の時に相続財産を現に占有している場合に限られることになりました(第940条)
  • 片付け・特殊清掃の業者の選び方は実家の片付け・遺品整理業者の選び方にまとめています

実家を賃貸に出していて、入居者が亡くなった場合

国土交通省と法務省は2021年6月に「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を出しています。これは、60歳以上の単身の人が入居するときに、亡くなった後の契約の解除や残置物の処理を誰に任せるかを、あらかじめ決めておくためのものです。入居者が亡くなった後から使う仕組みではありません。結んでいなかった場合、賃借権や部屋に残された家財は入居者の相続人に引き継がれるため、原則として相続人との調整になります。

相続税の土地の評価

国税庁は、騒音・日照の阻害・臭気・忌みなどで取引金額に影響があると認められる宅地は、その部分の価額の10%を差し引いて評価できるとしています(タックスアンサーNo.4617)。ただし、家の中で人が亡くなったことがこの「忌み」に当たるかは書かれていません。相続税の申告で評価に反映できるかは、税理士か税務署に確認してください。

告知の範囲、契約不適合責任、相続放棄との関係は、事案によって判断が分かれます。不動産会社だけで判断せず、必要に応じて弁護士に相談してください。この記事は一般的な仕組みの説明で、個別の事情に当てはまるかを保証するものではありません。

よくある質問

親が病気で亡くなり、数日後に見つかりました。売るときに伝える必要がありますか?

国土交通省のガイドラインでは、老衰や持病による病死などの自然死は、原則として告げなくてよいとされています。ただし、長く人知れず放置されたことなどで特殊清掃や大規模なリフォームが行われた場合は、告げる対象になります。また、買主から聞かれた場合は、期間や死因にかかわらず告げる必要があります。

何年たてば伝えなくてよくなりますか?

ガイドラインが示している「おおむね3年」は賃貸の場合の目安で、売買には期間の目安は示されていません。売るときは、時期にかかわらず不動産会社に事実を伝えて相談してください。

亡くなった親の名前や、発見されたときの様子まで伝える必要がありますか?

ガイドラインでは、告げる内容は事案の発生時期(特殊清掃が行われた場合は発覚時期)、場所、死因の別(自然死・事故死など)、特殊清掃が行われた場合はその旨とされています。氏名・年齢・家族構成や、具体的な死の態様・発見状況などを告げる必要はないとされています。

建物を解体して土地として売れば、伝えなくてよいですか?

ガイドラインは、人の死が生じた建物を取り壊した後の土地の取引を対象にしていません(裁判例や取引実務の蓄積がないため)。つまり、ガイドラインでは扱いが示されていないということで、告げなくてよいと決まっているわけではありません。不動産会社や弁護士に相談してください。

出典

2026年10月6日時点の情報です。制度は変わることがあるため、手続きの前に各窓口で確認してください。調べ方は調査方法にまとめています。