まずやること:届出・登記・場所の確認
山林を手放す方法を考える前に、相続した人がやるべき手続があります。どの方法を選ぶ場合でも必要になるので、先に済ませておきましょう。
| やること | 期限・内容 | 窓口 |
|---|---|---|
| 森林の土地の所有者届出 | 所有者になった日から90日以内 | 山林がある市町村 |
| 相続登記 | 相続で取得したことを知った日から3年以内 | 法務局 |
| 林地台帳・地図の確認 | 場所、面積、境界の測量状況を調べる | 市町村の林務担当 |
| 境界の確認 | 隣の土地との境目がどこか | 隣地の所有者、市町村など |
森林の土地の所有者届出(森林法第10条の7の2)
地域森林計画の対象となっている森林の土地を、売買や相続などで新しく所有した人は、市町村長に届け出なければなりません。林野庁によると、個人・法人を問わず、面積に関わらず届出が必要です。
- 期限は、所有者になった日から90日以内です(森林法施行規則第7条)
- 届出書には、土地の位置を示す地図と、登記事項証明書など取得したことが分かる書類を添えます
- 登記上の地目が山林でなくても、実際に森林になっていれば対象になる可能性があります
- 令和8年4月1日から様式が改正され、国籍等を書く欄が加わりました
届出をしない、またはうその届出をした人は、10万円以下の過料の対象になります(森林法第213条)。この届出は相続登記とは別の制度で、登記をしたかどうかに関わらず必要です。
自分の山林が対象の森林かどうかは、都道府県か市町村の林務担当に問い合わせると分かります。
相続登記(2024年4月から義務)
相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが義務になりました。正当な理由なく登記しない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。2024年4月1日より前に相続した山林も対象です。売る場合も、国に引き取ってもらう場合も、名義が亡くなった人のままでは進められません。詳しくは相続登記の義務化の記事にまとめています。
林地台帳と境界
市町村は、森林の土地ごとに所有者、所在、地番、地目、面積、境界の測量の状況などを載せた「林地台帳」を作り、公表できる部分を公表することになっています(森林法第191条の4・第191条の5)。森林の地図も作られています。台帳や地図に漏れや誤りを見つけたら、所有者は市町村に申し出ることができます(第191条の6)。
境界がはっきりしないことは、山林ではめずらしくありません。国土交通省によると、地籍調査の進捗率は全国で53%(令和7年度末)で、山村部(林地)は調査が遅れている地域とされています。
手放す方法の比較
山林を手放す主な方法を比べると、次のようになります。
| 方法 | 所有権はどうなる? | 主な費用 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 1. 隣接所有者・地元の人に売る | 買主に移る | 登記費用、測量費用など | 価格や境界の確認を当事者で決める |
| 2. 森林組合に相談する | 相談内容による | 相談内容による | 買取をしてもらえるかは公的資料では確認できない |
| 3. 森林経営管理制度 | 自分のまま | 公的な資料では確認できず(市町村に確認) | 手放す制度ではなく、管理を任せる制度 |
| 4. 相続土地国庫帰属制度 | 国に移る | 審査手数料1筆14,000円、負担金(面積で計算) | 境界不明や手入れ不足の森林は通らないことがある |
| 5. 相続放棄 | 初めから相続しなかったことになる | 収入印紙800円+郵便切手 | 3か月以内。山林以外の財産も相続できない |
| 6. 市町村に寄附する | 市町村に移る | 自治体による | 受け付けない自治体が多い |
以下、それぞれを順に見ていきます。
1. 隣の土地の所有者や地元の人に売る
山林は、一般の不動産市場では買い手が見つかりにくいことがあります。隣の山林の所有者にとっては、自分の山とまとめて管理できる利点があるため、まず打診してみる方法があります。山林の売買価格について、公的な平均はありません。
売る場合に確認しておきたいことです。
- 境界:どこからどこまでを売るのかを、買主と一緒に確認します
- 届出:買主にも、所有者になってから90日以内の届出義務があります
- 立木:土地と一緒に木も売るのか、木の扱いを決めておきます
- 伐採:売る前に木を切る場合は、原則として伐採を始める日の90日前から30日前までに、市町村へ伐採及び伐採後の造林の届出が必要です(森林法第10条の8、施行規則第9条)
2. 森林組合に相談する
森林組合は、森林組合法にもとづく組合で、組合員のための森林経営の指導や、組合員から委託を受けた森林の施業(間伐など)や経営を事業として行います(森林組合法第9条)。
- 山林の場所や境界、木の状態について相談できることがあります
- 管理や間伐を委託するという選択肢もあります
- 山林を買い取ってもらえるか、買い手を紹介してもらえるかについて、公的な資料は見当たりません。組合ごとに確認してください
法務省の手引きでは、森林組合などと森林経営委託契約を結んでいる土地は、国庫帰属の申請ができない土地に当たる可能性があるとされています。将来、国庫帰属を考えている場合は、契約の前に法務局へ相談してください。
3. 森林経営管理制度:手放すのではなく、管理を任せる制度
森林経営管理制度は、手入れの行き届いていない森林について、市町村が森林所有者から経営管理の委託を受ける(経営管理権を設定する)制度です。林業に向いている森林は地域の林業経営体に再委託し、向いていない森林は市町村が公的に管理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所有権 | 移りません。所有者のまま、経営や管理を市町村に委ねます |
| 対象 | 現在、経営管理が行われていない森林(手入れされている森林を取り上げることはない) |
| 収益 | 木材を売った収益から経費を引いて利益があれば、その一部が所有者に支払われる仕組み(森林経営管理法第2条) |
| きっかけ | 市町村から届く「意向調査」への回答など |
| 実績 | 意向調査は制度開始から6年間で約118万ha。回答のうち約4割の所有者が市町村への委託を希望 |
市町村が経営管理権を設定するかどうかは、市町村が必要かつ適当と認めた場合に限られます。希望すれば必ず委託できるわけではありません。
なお、法務省の手引きでは、経営管理権が設定されている森林も、国庫帰属の申請ができない土地に当たる可能性があるとされています。
4. 国に引き取ってもらう(相続土地国庫帰属制度)
相続や遺贈で取得した土地を、一定の条件を満たせば国に引き取ってもらえる制度です(2023年4月27日開始)。制度が始まる前に相続した山林も対象です。
森林の負担金は面積で計算
承認されると、10年分の管理費用にあたる負担金を納めます。宅地や一部の農地以外の土地は原則20万円ですが、主に森林として使われている土地は、面積に応じて計算します(施行令第5条第1項第3号)。
| 面積 | 負担金の計算式 |
|---|---|
| 750㎡以下 | 面積×59円+21万円 |
| 750㎡超〜1,500㎡以下 | 面積×24円+23万7,000円 |
| 1,500㎡超〜3,000㎡以下 | 面積×17円+24万8,000円 |
| 3,000㎡超〜6,000㎡以下 | 面積×12円+26万3,000円 |
| 6,000㎡超〜12,000㎡以下 | 面積×8円+28万7,000円 |
| 12,000㎡超 | 面積×6円+31万1,000円 |
計算した金額の1,000円未満は切り捨てます。この式にあてはめた例です(面積は仮の数字)。
| 山林の面積 | 負担金 |
|---|---|
| 500㎡ | 23万9,000円 |
| 1,000㎡ | 26万1,000円 |
| 3,000㎡ | 29万9,000円 |
| 10,000㎡(1ha) | 36万7,000円 |
| 50,000㎡(5ha) | 61万1,000円 |
このほか、申請時に審査手数料が土地1筆あたり14,000円かかり、却下・不承認でも返ってきません。隣り合う同じ種類の土地が2筆以上あるときは、面積を合わせて1筆分として負担金を計算するよう申し出ることができます。負担金は通知が届いた翌日から30日以内に納め、納付した時点で所有権が国に移ります。
森林が通らないことがある主な理由
法令と法務省の手引きでは、次のような土地は引き取れないとされています。山林で特に気をつけたいものを抜き出しました。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 申請できない(却下) | 境界が明らかでない土地、所有権の範囲に争いがある土地 |
| 申請できない(却下) | 地上権などの権利が設定された土地(森林経営委託契約や経営管理権がある森林も該当する可能性) |
| 申請できない(却下) | 現に通路として使われている土地 |
| 承認されない(不承認) | 勾配30度以上かつ高さ5メートル以上の崖があり、管理に過分の費用や労力がかかる土地 |
| 承認されない(不承認) | 倒木のおそれがある枯れ木や、定期的な伐採が必要な竹など、管理を妨げる樹木がある土地 |
| 承認されない(不承認) | 土砂の崩壊など、災害を防ぐための措置が必要な土地 |
| 承認されない(不承認) | 市町村森林整備計画に合っておらず、国が追加で造林・間伐・保育をする必要がある森林(例:間伐の実施を確認できない人工林) |
森林に樹木があること自体は問題ではありません。また、土砂災害警戒区域に指定されているだけで不承認になるわけではなく、現地調査などで総合的に判断されます。境界については、隣の土地との境界点に仮の杭などを置き、写真を提出する必要があります。
実績:地目別の件数
法務省の統計(令和8年8月31日現在・速報値)では、次のとおりです。
| 項目 | 全体 | うち山林・森林 |
|---|---|---|
| 申請件数(地目別) | 5,997件 | 山林 902件 |
| 帰属件数(種目別) | 3,119件 | 森林 203件 |
- 申請は登記の地目、帰属は国有地としての種目で数えているため、同じ区分ではありません。また審査中の案件もあるため、この2つの数字から「承認率」は計算できません
- 不承認100件のうち、37件が「国による追加の整備が必要な森林」、46件が「管理を妨げる工作物・樹木などがある土地」でした
- 却下85件のうち、23件が「境界が明らかでない土地」でした
5. 相続放棄
山林を含め、亡くなった人の財産を一切相続しない方法です。
- 自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述します
- 費用は収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です
- 放棄すると、初めから相続人でなかったものとみなされます(民法第939条)。山林だけを放棄して預貯金を相続する、ということはできません
- 放棄の時に財産を現に占有している場合は、次の相続人などに引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存する義務があります(民法第940条)
すでに相続を承認した後や、3か月を過ぎた後に「山林だけいらない」となった場合は、相続放棄以外の方法を考えることになります。
6. 市町村への寄附
「市町村に寄附すればいい」と考える人もいますが、利用する予定のない土地は受け付けない自治体が多くあります。
| 自治体 | 公式の案内 |
|---|---|
| 鹿児島市 | 利用計画等がないため、現在、土地の寄付(売却)は受け付けていない |
| 那須町(栃木県) | 町として有効な使用が見込まれる場合のみ受け付け、利活用が難しい土地は断っている |
| 新潟市 | 行政活用価値または換価価値が見込まれること、将来多額の維持管理費がかからないことなどを要件としている |
山林の寄附を受け付けているかどうかは、山林がある市町村の担当課に直接確認してください。
持ち続ける場合の税金と注意点
固定資産税はどれくらい?
山林にも固定資産税がかかります。ただし、同じ人が同じ市町村内に持っている土地の課税標準額の合計が30万円未満なら、原則として課税されません(地方税法第351条の免税点)。
総務省の「固定資産の価格等の概要調書」(令和7年度)では、全国の一般山林の平均価格は1㎡あたり13円で、宅地(全体の平均は1㎡あたり39,983円)と比べてとても低くなっています。
仮の数字で計算すると、1ha(10,000㎡)の山林の評価額が1㎡13円なら13万円です。その市町村にほかに土地を持っていなければ、免税点未満になります。ただし、同じ市町村に実家の土地など別の土地があれば、合計で判定します。
評価額は場所によって大きく違います。「山林だから税金はかからない」とは言い切れません。実際の評価額と税額は、毎年届く納税通知書の課税明細書か、市町村の税務担当で確認してください。
管理で気をつけたいこと
手放す方法が見つからず、しばらく持ち続けることもあります。その場合に知っておきたいことです。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 木による事故 | 竹木の植え方や支え方に問題があって他人に損害を与えると、占有者や所有者が賠償責任を負うことがあります(民法第717条第2項) |
| 隣地への越境 | 枝が境界を越えると、隣の所有者から切除を求められます。催告しても切らない場合などは、隣の所有者が自分で切り取れます。根は隣の所有者が切り取れます(民法第233条) |
| 災害 | 土砂の崩壊などのおそれがある土地は、国庫帰属でも不承認の理由になります。状態を確認しておくことが大切です |
| 手入れの状態 | 間伐がされていない人工林は、将来、国庫帰属を申請するときに不承認の理由になることがあります |
| 所有者情報 | 住所が変わったときなども、林地台帳に誤りがあれば市町村に申し出ることができます |
相談先
| 相談したいこと | 窓口 |
|---|---|
| 所有者届出、林地台帳、森林経営管理制度、伐採の届出 | 市町村の林務担当 |
| 地域森林計画の対象かどうか、保安林など | 都道府県の林業事務所(林務担当) |
| 管理・間伐の委託、山林の状態 | 地域の森林組合 |
| 相続登記、相続土地国庫帰属制度 | 法務局(国庫帰属の申請は都道府県の本局) |
| 相続放棄 | 亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所 |
| 固定資産税 | 山林がある市町村の税務担当 |
税金や法律の個別の判断は、税務署、法務局、市町村に確認してください。家と土地をまとめて整理したい場合は、実家じまいの手順や田舎の実家が売れない時の処分方法もあわせてご覧ください。
よくある質問
相続した山林の届出をしないとどうなりますか?
森林法では、地域森林計画の対象となっている森林の土地を新たに所有した人は、所有者になった日から90日以内に市町村長へ届け出る義務があります。届出をしない、またはうその届出をした場合は、10万円以下の過料の対象になると定められています(森林法第213条)。相続登記とは別の手続なので、両方が必要です。
山林を国に引き取ってもらうと、いくらかかりますか?
相続土地国庫帰属制度では、審査手数料が1筆14,000円、承認された場合の負担金は森林の面積に応じて計算します。政令の計算式にあてはめると、たとえば1,000㎡なら26万1,000円、1万㎡なら36万7,000円です。このほか、境界を示す資料の準備などに費用がかかることがあります。
森林経営管理制度を使えば、山林を手放せますか?
手放す制度ではありません。森林の所有者のまま、手入れの行き届いていない森林の経営や管理を市町村に委ねる制度です。なお、法務省の手引きでは、経営管理権が設定された森林は、国庫帰属の申請ができない土地に当たる可能性があるとされています。
山林の固定資産税はかかりますか?
かかる場合とかからない場合があります。同じ市町村内に持っている土地の課税標準額の合計が30万円未満なら、原則として固定資産税はかかりません(免税点)。全国の一般山林の平均価格は1㎡あたり13円(令和7年度)と低いため、山林だけなら免税点未満になることもあります。正確な金額は納税通知書か市町村の税務担当で確認してください。
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出典
- e-Gov法令検索「森林法」(第10条の7の2、第10条の8、第191条の4〜6、第213条)
- e-Gov法令検索「森林法施行規則」(第7条、第9条)
- 林野庁「森林の土地の所有者届出制度」
- 林野庁「森林経営管理制度(森林経営管理法)について」
- e-Gov法令検索「森林経営管理法」(第2条)
- e-Gov法令検索「森林組合法」(第9条)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」
- e-Gov法令検索「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令」(第4条、第5条)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度のご案内[第2版]」(令和7年10月版)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
- 裁判所「相続の放棄の申述」
- e-Gov法令検索「民法」(第233条、第717条、第939条、第940条)
- 総務省「固定資産税の概要」
- e-Gov法令検索「地方税法」(第351条)
- 総務省「令和7年度 固定資産の価格等の概要調書」(土地・総括表)
- 国土交通省 地籍調査Webサイト「全国の地籍調査の実施状況」
- 鹿児島市「市に土地を寄付(売却)したいのですが、どうすればいいですか。」
- 那須町「土地の処分・寄付等について」
- 新潟市「土地の寄附について」
2026年10月1日時点の情報です。制度は変わることがあるため、手続きの前に各窓口で確認してください。調べ方は調査方法にまとめています。